菰野のリノベーション
竣工
用途
構造規模
延床面積
所在地
撮影
2023.10
住宅
木造2階建
153.33㎡
三重県三重郡菰野町
そあスタジオ
築35年の住宅のリノベーションである。
敷地は密集した住宅地内にあり、周辺に高い建物は無く2階の窓からは集落の瓦屋根の連なり、遠くには菰野の山並みが見える。
リノベーションには既存の建物にどのような特徴があるかを読み解き、それをどのように活かすかという楽しみがある。
新築の設計よりも自由度が低いかもしれないが、その分チャレンジ精神がふつふつと湧いてくるのだ。
この住宅のリノベーションでは、1階の二間続きの和室(客間)をそのまま残し、元々LDKがあった場所を子供部屋にした。子供部屋はワンルームで、子供の成長に合わせ家具などを配置することによって個室化できるようにした。玄関横の手洗いスペースを収納に改修し、玄関に溢れがちな雑物をすっきりと収納できるようにした。
2階にはLDKと寝室を計画した。2階のリビングダイニングを配置することで、来客時でも家族スペースのプライバシーを確保し、採光や通風も改善され窓外の景色を望むことができるようになった。また、リビングダイニングの天井を屋根勾配に沿ってつくり、リビングダイニングに平面的な広がりだけでなく断面的な広がりを持たせることができた。元々急勾配だった階段は、段数を増やし1段目を玄関に正対させることで機能的にも心理的にも2階に上がりやすくしている。
内装は元々砂壁で暗い色調だったが、調湿効果のある漆喰調塗装材を使用し明るい色調に変更した。床や家具には杉材を積極的に使用した。杉材は傷つきやすいが、反面柔らかくサラリとした肌触りで気持ちの良い材料である。経年変化も楽しみだ。
2階の梁は元々天井で隠れていたが、迫力のある松材が使われていたため、天井を剥がし梁をあらわすことにした。そのおかげでリビングダイニングが開放的でダイナミックな空間になった。
玄関框に使われていた欅が無垢材でとても立派な材料だったことから、新しい玄関でも使うことにした。新しい玄関框は既存框よりも長さが必要だったため、欅を半割にして使用した。丁寧に表面を鉋掛けしてもらった欅は美しく艶のある玄関框として蘇った。玄関の格天井もそのまま残し、白く明るくなった玄関のアクセントになっている。
玄関ホールの網代天井は網代部分だけ取り外してもらい和室の廊下の天井に転用した。
我々が提案した2階LDK案は、暮らし方が大きく変わるので勇気のいる決断だったかもしれないが工事が進むにつれそのメリットを感じていただいたように思う。空間に合わせて家具を新調されるなど、すでに上手に住みこなして頂いているのをとても頼もしく感じている。